9/04/2006

France’s Most Beautiful Villages


Vézelay1
Originally uploaded by Yoichiro.




Vézelay2
Originally uploaded by Yoichiro.



「フランスの最も美しい村々」という魅惑的な響きに惹かれて、その内の1つ村を訪れた。

フランスでは、1982年に設立された「フランスの最も美しい村々」(les Plus Beaux Villages de France)というNPOによって、現在144の村が「フランスの最も美しい村」として認定されている。認定されると公式ガイドブックやサイトで紹介され、その他の旅行会社や旅行雑誌にも掲載されるようになる。もちろん村おこしが目的ではあるが、厳しい登録基準が複数もうけられており、例えば次に挙げるように、なかなか面白い内容である。

・人口が2千人以下であること
・史蹟建造物の認定をうけた建物がある地域、または風致地区と認められた地域、あるいはその両方が2カ所以上存在すること。
・村の周辺の道路網を完備していること
・村の建物の外観(大きさ、屋根や窓の形や色等)に均質性と調和があること
・電線を地下埋め込みにする、花や植物による装飾等、村全体の美化の努力がなされていること
・観光案内所、宿泊施設等、観光客の受け入れ体制が整っていること
(引用文献:辻啓一著『フランスの「美しい村」を訪ねて』)

これらは登録基準のほんの一部だそうだ。人口2千人以下の村に観光案内所・宿泊施設を求めるのは難しいだろうと思うが、登録されている中には人口数百人も村もあるので驚きである。それだけ人が訪れて、経済効果が出ているということなのかもしれない。

僕が訪れたのはヴェズレー(Vézelay)という村で、パリから電車とタクシーで○時間ぐらいで着くはずだったが、途中、ちょっとした間違いでCravantという本当に小さな村の駅でおいてけぼりを食い、3時間ほど散歩することになってしまった。しかし、思い返してみるとCravantの方が僕の持っていた「フランスの最も美しい村」のイメージに近かったので、偶然にも短い滞在ができたことは幸福であったと思う。144の村々からヴェズレーを選んだのは、パリから数日の小旅行で訪れることができる村だからで、その他の候補地は、最寄り駅からタクシーで80kmなど、小旅行の気分で行ける感じではなかった。

ヴェズレーは、ブルゴーニュ地方の果てしなく続く平原の小高い丘の上に立つ小さな村であり、頂きのサント・マドレーヌ聖堂を中心に城壁に囲まれた美しい町並みが形成されていた。メインストリートは聖堂へ続く坂道の参道であり、みやげ物屋や食堂、宿が両側に並んでいる。詳しい説明は省略するが、ヴェズレーは、十字軍と関係があったり、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステッラへの巡礼道の起点であったりと歴史的に重要な意味のある村であり、実は世界遺産にも登録されている。そのため小さな村ながら観光地としてよく整備されていたことが予想外であった。だから、本当に何にもないCravantの方が僕の「美しい村」のイメージにあったのだと思う。

しかし、聖堂の裏庭から、緩やかに起伏の線を描く牧草地と葡萄畑が永遠に続く風景を見たとき、またその牧草地を囲む生垣に沿って小径を散歩しながら遠くに白い牛の群れを眺めたとき、ああ、これが見たかったのだと思った。こういう風景を美しいと思うのは、僕のどの経験が起源なのか、または、いつすり込まれたのか。なぜ、こんなところまで来てしまうのか、自分でも不思議である。
しかし、それが僕だけではないから「フランスの最も美しい村々」があるわけで、まんまと乗せられているのだが、望まれて来ている分、ストレンジャーが小さな村をうろうろしている時の後ろめたさがなくて良い。

ところで、日本にも「日本で最も美しい村」連合なるものがあるらしい。日本にも本当に美しい風景がある。その風景を求めてフランス人が日本の村を訪れるようなことになったら面白いなと思うので、まずは自分で出かけて見よう。